会場調査(セントラルロケーションテスト)とは? メリット・デメリットと実施ステップを解説
商品開発やパッケージデザインの決定などを行う際に、「担当者の勘や経験によって判断しており、根拠・意図を説明できない」「消費者の感情や印象が見えない」などと悩まれるケースもあるのではないでしょうか。
売れる商品やパッケージデザインを作るには、企業目線で考えるのではなく、消費者の声やエビデンスに基づいた客観的な評価を行うことが重要です。企業が消費者のリアルな声を収集する調査方法の一つに“会場調査(セントラルロケーションテスト)”があります。
この記事では、会場調査の概要やメリット・デメリット、実施する際の具体的なステップについて解説します。
目次[非表示]
- 1.自社商品の評価に役立つ会場調査
- 2.会場調査のメリット
- 3.会場調査のデメリット
- 4.会場調査を実施するステップ
- 4.1.①会場調査の企画を立案する
- 4.2.②調査対象者をリクルートする
- 4.3.③調査を実施する
- 4.4.④調査結果の集計と分析を行う
- 5.まとめ
自社商品の評価に役立つ会場調査
会場調査とは、調査対象者を特定の場所に集めて、商品の感想や評価などをインタビューまたはアンケートなどで調べる手法のことです。セントラルロケーションテスト(Central Location Test)、もしくは頭文字をとって“CLT”とも呼ばれます。
その場で商品を見たり、使用したりできるため、“対象者がどのように感じたか”“第一印象はどうだったか”といった率直な意見や本音を得られやすくなります。
商品に対する消費者のリアルな感想や印象を定量的・定性的に評価することを目的として、以下のさまざまな用途で活用されています。
▼会場調査の活用例
- 新商品の試用
- 食品の試飲・試食
- テレビCMや販促物の仮説検証
- パッケージデザインの評価・比較
- 売り場の評価 など
会場調査のメリット
新商品やパッケージデザイン、売り場の評価などに役立つ会場調査は、対象者と直接コミュニケーションを取って意見・感想を収集できます。
▼会場調査のメリット
- 調査の機密性を守れる
- 対象者のリアルな反応を観察できる
- 感想・評価を深く掘り下げられる
- 調査環境を統一できる
会場調査では、スマートフォンの使用を制限したり、資料・商品を現場で回収したり、秘密保持に関する誓約書を締結したりして、企業側で対象者に関する情報や実施環境を管理できます。そのため、発表前の新商品や試作段階のパッケージなど、外部への流出を防ぎたい機密性の高い調査を行えます。
また、実際に商品を体験したり、売り場をイメージした環境で買い物をしてもらったりすることで、対象者の行動・表情・視線の動きなどからリアルな反応を観察できます。明確な感想・評価を得られなかった場合や、気になる回答があった場合には、ヒアリングを行って深く掘り下げることも可能です。
さらに、会場の明るさや商品の試用条件などを統一して同じ環境下で調査を行えるため、対象者によって感じ方が異なってしまう問題を防止できます。
会場調査のデメリット
会場調査を実施する際は、事前の準備や調査環境などに注意点があります。
▼会場調査のデメリット
- 労力や費用がかかる
- 会場の環境そのものがバイアスになる可能性がある
会場調査を実施するには、対象者の募集・選定から会場の手配、設営などに労力と費用がかかります。実際の売り場を想定して陳列棚やブースを作る場合には、搬送・設営のための人員と費用がさらに必要になるケースもあります。
また、実際の店舗や対象者の自宅とは異なる環境で調査を行うため、プレッシャーを感じたり、会場の雰囲気によって先入観を持ったりする可能性もあると考えられます。回答内容の揺れを防ぐには、対象者が落ち着いて評価を行えるような環境をつくることが必要です。
会場調査を実施するステップ
会場調査をスムーズかつ効果的に実施するには、目的に応じて対象者や調査方法を選定するとともに、実施後に分析を行うことがポイントです。ここからは、会場調査を実施する具体的なステップを解説します。
①会場調査の企画を立案する
「何のために会場調査を実施するのか」「どのような情報を収集したいのか」を踏まえて、会場調査の企画を立案します。
会場調査の目的を明確にして、具体的な調査項目と調査方法などを決定しておくことで、アンケートの設問やインタビューの内容を設定しやすくなります。
また、情報の収集方法やスケジュール、実施後の分析方法についてもこの段階で定めておくと社内フローをスムーズに進められます。
▼企画立案の際に定めておく内容
- 実施目的
- 調査項目・調査方法
- 収集したい具体的な情報の内容・範囲
- 実施期間
- 会場の規模・場所
- 対象者の属性・人数
- 収集した結果の分析方法
- 予算 など
②調査対象者をリクルートする
調査対象者をリクルートする方法には、主に2つが挙げられます。
▼調査対象者をリクルートする方法
方法 |
概要 |
ストリートキャッチ |
調査当日に会場付近の通行人に声をかけて呼び込む |
事前リクルート |
調査対象者の条件を絞ってモニターを選定する |
ストリートキャッチの場合、事前にモニターを選定する労力を抑えられるほか、属性が異なるさまざまな人物を集めやすくなります。ただし、想定している調査対象者の人数を集められない可能性があります。
事前リクルートの場合、属性や居住地などの一定の条件に合致する人物に絞って対象者を集められます。ただし、モニターの選定や当日までの連絡対応などに労力がかかりやすいため、調査会社に外注するケースもあります。
③調査を実施する
会場調査の規模や内容に適した会場を手配して、対象者への調査を実施します。
自社の調査員によって対象者の反応を観察するとともに、定量的・定性的な調査を組み合わせて行うことで会場調査の精度を高められます。
▼会場調査の実施方法
調査の種別 |
実施方法 |
定量調査 |
|
定性調査 |
|
アンケートを用いた定量調査では、設問の内容や形式によって対象者が回答に迷ったり、正しい意見・感想を選択できなかったりして、回答率と精度に影響する可能性があります。対象者の率直な意見・感想を得るには、直感的に回答しやすい設問を設計することが重要です。
▼アンケートの設問を設計する際のポイント
- 1つの設問に対して1つの質問にする
- 専門用語や抽象的な言い回しを入れない
- 設問に対して考えられる回答の選択肢が不足しないようにする
- テストを実施して設問の流れや回答が負担にならないか確認する
④調査結果の集計と分析を行う
会場調査を実施したあとは、対象者から収集したアンケートやインタビューの結果を集計して分析を行います。
調査結果の集計方法には、単純集計とクロス集計、自由記述集計などがあります。異なる集計方法を組み合わせることで、さまざまな視点で結果を把握でき、共通点や新たな課題の発見につながります。
▼調査結果の集計方法
集計方法 |
概要 |
単純集計 |
設問ごとの回答比率や平均値を求める |
クロス集計 |
単純集計で明らかにしたデータに回答者の属性やほかの質問などと掛け合わせて、異なる軸から傾向を把握する |
自由記述集計 |
自由記述による回答を分類または選択肢化して、全体の傾向や目立つ特徴などを把握する |
文章での回答を求める自由記述によるアンケートの集計・分析作業には、定性情報を定量化するための専門的な知識・技術が求められます。自社での対応が難しい場合には、専用の分析ツールや外部のサービスを活用することが有効です。
まとめ
この記事では、会場調査について以下の内容を解説しました。
- 会場調査の目的と活用例
- 会場調査のメリット・デメリット
- 会場調査を実施するステップ
会場調査によって実際に商品や売り場を体験してもらうことで、消費者のリアルな意見・感想・印象などを定量的・定性的に把握できます。
スムーズかつ効果的に実施するには、調査の目的に応じて対象者や調査方法を選定するとともに、的確な回答が得られるようにアンケートの設問を設計することが重要です。また、実施後は回答内容の集計と分析を行い、商品やパッケージデザインの改善につなげることも欠かせません。
ただし、会場調査はメリットが多い一方で、実施には労力や費用がかかります。労力や費用を抑えつつ消費者による反応を分析する代替策としておすすめなのが、コニカミノルタの『EX感性』です。
EX感性は、独自の画像解析技術と感性脳工学に基づき、視線の動きや印象などを定量的に分析することが可能です。実際に会場調査を行う場合と比較して、労力や費用を削減できます。
会場調査を実施する前段階での仮説設定のほか、商品開発やパッケージデザインの決定期間が限られている場合などにご活用いただけます。
詳しいサービス内容は、こちらの資料をご確認ください。