店舗売り場での売上予測事例

ショッピングモール売り場設計の革新
EX感性による80%以上の高精度CVR予測!

 

イオン株式会社

イオン九州株式会社

サントリー株式会社

グランドデザイン株式会社

 

 

活用前の課題

イオン株式会社(以下、イオン)及びイオン九州株式会社(以下、イオン九州)は、全国に展開するショッピングモールの運営において、商品棚割りの全社的な最適化という重要な課題に直面していました。具体的には、商品陳列の配置や棚販促物の設置による、売上貢献度が可視化できていないという問題がありました。この状況により、マーケティング施策の効果検証や、効果的なクリエイティブガイドラインの策定等が困難になっていました。

 

このような課題はイオン及びイオン九州だけでなく、商品を供給するメーカー様側にも影響を及ぼしていました。メーカー様にとっては、自社商品の棚配置の効果を予測したり、店舗に対して定量的な提案を行うことが難しい状況でした。

得られた成果

イオン及びイオン九州は、サントリー株式会社(以下、サントリー)と連携のもと、グランドデザイン株式会社(以下、グランドデザイン)提供の新サービス「ガッチャ!シェルフ」を活用したプロジェクトを実施しました。このプロジェクトでは、特設棚の効果測定にEX感性の因果推定分析を活用し、各商品の購買率を予測しました。実際の効果を検証するため、店頭にAIカメラを設置し消費者行動を観測しました。その結果、EX感性のシミュレーション結果と実際の観測データが80%以上の高い一致率を示しました。この成果は、EX感性の高い予測精度を実証し、今後の店舗設計や商品陳列戦略の最適化に貢献する可能性を示しています。

導入の経緯

イオン及びイオン九州は、全国展開する大規模小売店舗のマーケティング施策最適化にEX感性を活用しました。イオン九州が運営するイオンマリナタウン店(福岡市)では、「ガッチャ!シェルフ」と連携し、特設棚の効果測定にEX感性を導入。この取り組みでは、棚のデザインや商品配置が購買行動に与える影響を事前に予測し、最適な陳列方法を導き出しました。実際の消費者行動データとの照合により、予測精度を検証。この革新的アプローチは、大規模小売業におけるデータ駆動型マーケティングの新たな可能性を示し、今後の戦略立案に貢献することが期待されています。

分析の流れ

1.特設棚の設置

イオンマリナタウン店では、「ガッチャ!シェルフ」と連携して、新たな特設棚をデザインし、エンド棚として設置しました。この特設棚は、人通りの多いメイン通路側に配置され、消費者の非計画購買を促進することを目的としています。

 

棚の構成には工夫が凝らされており、下段にサントリーの生ビール商品を陳列し、上段にはビールとの相性が良いおつまみやお菓子を配置しました。この組み合わせにより、商品間のシナジー効果を生み出し、購買意欲を高めることを狙っています。

2.店頭AIカメラの設置

特設棚の効果を正確に測定するため、POSデータだけでは不十分だと判断し、店頭AIカメラを導入しました。このカメラは、消費者の購買行動に影響を与えないよう、気づかれにくい場所に設置されました。

AIカメラは下記情報を取得しています。

・立ち寄った人数
・性別や年齢などのデモグラフィック情報
・棚前での滞在時間
・消費者が選んだ商品

これらのデータにより、POSデータでは把握しきれない消費者行動の詳細な分析が可能となりました。例えば、どの年齢層が特設棚に最も興味を示すか、平均的な滞在時間はどれくらいか、どの商品が最も手に取られやすいかなどの洞察を得ることができます。

3.EX感性を活用した陳列のCVR予測

3-1.棚デザイン分析

棚のデザイン案完成時に、実際の消費者視点に立った分析を実施しました。平均的な消費者の身長と目線の高さを考慮し、販促物、陳列場所、パッケージの注目度を定量的に評価しました。

分析では注目性、色彩と印象、複雑度、POPのデザイン効果など、購買行動に影響を与える可能性のあるデザイン要素を抽出し定量化しました。
 

3-2.因果探索分析

デザインを分析した後、脳科学と各種研究に基づき、売り場における売上への重要要素を予測する因果探索を行いました。

その結果、売上に影響する重要な要素は、「棚の場所」、「陳列場所注目度」、「POP効果」の3つが主要因であり、それぞれ10%以上の影響力で推定しました。
その他、価格・ブランドも売上に対して重要な役割を果たすことを予測しています。

3-3.CVR予測

因果探索の結果を基に、デザイン要素、ブランド、歴史、色、容量などを考慮し、重み付けした商品の因果推定分析を実施。コンバージョンレート(CVR)を予測しました。

分析の結果、おつまみ類が全体的に高いCVRを示し、特に「じゃがりこ」や「CRATZ」が高いコンバージョンと推定されました。
一方、ビールは陳列場所の視認性が低いため、CVRが低くなると予測しました。

4.店頭AIカメラでの消費者行動観察

店頭カメラを設置し、実際の消費者行動を観察しました。検証に使用したカメラでは、属性情報、滞在時間、立ち寄った人などの数を数えることができ、加えて滞在時間や購入商品の情報まで取得いたしました。

検証は週末の2日間にかけて行われ、開店から閉店まで実施し、事前に定めた基準に沿って各商品に対する購買行動を集計しました。

検証の結果、2日間のCVRは、商品購入数/棚に立ち寄った人数=36%となりました。最も購買が多かったのはお菓子類で、「じゃがりこL」や「チータラ」などが高いCVRを記録しました。一方、下段に置いてあったビール類の購入は少ない結果となりました。

5.EX感性予測結果とカメラ検証結果の照合

EX感性による事前予測と店頭カメラ分析の結果を照合したところ、予測一致率が82.88%と高精度を示しました。この結果は、EX感性を売り場の陳列計画に活用することで、各商品の売上を高い精度で事前に予測できることを実証しています。

この技術を用いることで、最適な陳列パターンをシミュレーションし、実際の売り場づくりに直接活用することが可能になります。これにより、売上の最大化と効率的な店舗運営を同時に実現できる新たな道が開かれました。

EX感性の活用は、従来の経験則や勘に頼った売り場設計から、データに基づいた科学的アプローチへの転換を意味します。この革新的な手法により、消費者ニーズにより適した、効果的な売り場づくりを実現いたします。

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