ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)とは? 3つの手法と取り組むポイント
スマートフォンやSNSが普及した今、顧客との接点が多様化・複雑化しています。そうしたなか、実店舗ではリアルならではの空間を活かして、顧客の感性と感覚に訴求できる強みがあります。
店舗のコンセプトや商品の魅力が伝わる売り場を作ることで、興味関心の喚起、購買意欲の向上につながると期待できます。なかでも視覚的な要素に焦点を当てて売り場を作る手法に“ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)”があります。
店舗のマネージャーやマーケティング部門の担当者のなかには、「ビジュアルマーチャンダイジングで何が期待できるのか」「どのように取り組めばよいのか」などと気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ビジュアルマーチャンダイジングの概要や手法、期待できる効果、取り組む際のポイントについて解説します。
なお、店舗マーケティングについてはこちらの記事をご確認ください。
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視覚的に訴求するビジュアルマーチャンダイジングとは
ビジュアルマーチャンダイジング(VMD:Visual Merchandising)とは、商品をより魅力的に見せるために陳列方法や店内の演出などを行い、消費者の購買意欲を高めるマーケティング手法です。商品計画や販売戦略を行う“マーチャンダイジング(MD:Merchandising)”の1種に当たります。
▼マーチャンダイジングの種類
手法 |
概要 |
ビジュアルマーチャンダイジング |
店内のディスプレイやPOPなどの見せ方を工夫して、購買行動に沿った商品の訴求を行う |
クロスマーチャンダイジング |
関連性のある商品を訴求して、“合わせ買い”や“ついで買い”を促す |
ライフスタイルマーチャンダイジング |
ターゲットのライフスタイルを軸にしてコンセプトに合った商品を総合的に提案する |
店舗でのマーケティング活動には“ディスプレイ”も挙げられますが、ビジュアルマーチャンダイジングのほうがより広域的な意味合いがあります。
ディスプレイは、商品の特徴や魅力が伝わるように、見やすく手に取りやすい陳列・配置を行うことです。これに対してビジュアルマーチャンダイジングは、店舗のテーマや商品のコンセプトを反映した売り場を演出して、売りたい商品の購入を後押しすることを指します。
なお、ビジュアルマーチャンダイジングは、実店舗だけでなくECサイトでのレイアウトやユーザーの導線を考える際にも活用されています。
マーチャンダイジングによる売り場作りについては、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
ビジュアルマーチャンダイジングで期待できる効果
ビジュアルマーチャンダイジングを意識して売り場を作ることで、以下の効果が期待できます。
▼期待できる効果
- 売上の向上を図れる
- 顧客満足度が向上する
- ブランディングにつながる
商品の使用シーンを想起させる演出や、魅力を伝える情報が分かりやすく提供されている売り場では、顧客への視覚的なアプローチを通して商品の認知を得たり、興味関心を喚起できたりします。「買ってみようかな」「使ってみたい」という意欲を醸成することで、購買行動を促して売上の向上につながりやすくなります。
また、商品がどこに何があるのかが探しやすく、季節やテーマに沿った陳列・ディスプレイがされている売り場は、スムーズかつ楽しく買い物ができます。「目当ての商品をすぐに見つけられる」「いつも欲しい商品がある」と印象づけることによって、顧客満足度の向上を図れます。
音や照明を使った演出やディスプレイ、POPなどを取り入れて、商品が持つコンセプトと世界観を視覚的に表現すれば、ブランディングにもつながります。ブランドのイメージが定着して顧客の共感や愛着が醸成されると、自社商品・店舗のファンが増えることも期待できます。
ビジュアルマーチャンダイジングの手法
ビジュアルマーチャンダイジングによる売り場作りを行う際には、基本となる3つの手法があります。
①ビジュアル・プレゼンテーション(VP)
ビジュアル・プレゼンテーション(VP:Visual Presentation)は、店舗のテーマやコンセプト、世界観などを視覚的に訴求して店舗全体のイメージづくりを行うことです。
店舗の入り口付近やメインのディスプレイなどで統一したイメージづくりを行うことで、顧客の注目を集めて店内へ誘導したり、競合他社との差別化を図ったりする役割があります。
▼ビジュアル・プレゼンテーションの例
- 新商品やメイン商品を店舗正面のスペースにディスプレイして、店舗前を通る人が目につきやすいようにする
- 店舗の入り口付近に季節のテーマやブランドイメージ、キャンペーン情報などを訴求する看板を設置する
- ショーウィンドウに新商品を展示して、什器やインテリア雑貨などでコンセプトを表現する飾りつけを行う
②アイテム・プレゼンテーション(IP)
アイテム・プレゼンテーション(IP:Item Presentation)は、商品を見やすく・選びやすく・手に取りやすく陳列することです。
商品をカテゴリやブランドなどの基準で分類して、規則的かつ整理された状態で配置することで、欲しいモノを見つけやすくなりスムーズな買い物体験を提供する役割があります。
サイズ・カラー・用途などを整理して陳列するだけでなく、顧客が直感的に理解しやすい見せ方にします。
▼アイテム・プレゼンテーションの例
- ライフスタイルや使用シーンに関連する商品を同じ陳列棚にまとめる
- 商品をカテゴリ別に陳列して、吊り下げ看板で場所を示す
- 商品の特徴や魅力を紹介するPOPを設置する
③ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーション(PP)
ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーション(PP:Point of Sales Presentation)は、陳列した商品の各コーナーで重点的に訴求したい商品を目立たせるように演出することです。
各コーナーの顔となる売れ筋商品や限定商品などを見つけやすくして、顧客の購買意欲を高める役割があります。店内の動線や視線の流れを意識したうえで、顧客の目につきやすい場所に商品を配置したり、装飾で目立たせたりします。
▼ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーションの例
- カテゴリ別に分類した陳列棚のなかからトレンド商品を選び、広いスペースかつ目線の高さに配置する
- メインとなる店内中央のディスプレイに新商品を配置する
- 商品の使用シーンを再現したコーディネートを提示する
なお、売れるディスプレイを作るポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
ビジュアルマーチャンダイジングに取り組むポイント
ビジュアルマーチャンダイジングに取り組んで商品の購入を後押しするには、商品の特性や顧客の行動などを踏まえて、陳列と動線設計を行うことがポイントです。
①商品の特性に合わせた陳列を行う
商品の形状や大きさ、価格帯などに合わせて陳列方法を変えることがポイントです。商品を分離・整理して規則的に陳列するとともに、視覚的に美しく見えるように配置することで見やすく・探しやすくなります。
また、顧客の目線になって、目につきやすく・手に取りやすい位置(ゴールデンライン)に商品を陳列することも重要です。
▼ビジュアルマーチャンダイジングを意識した陳列のテクニック
- 価格帯を低・中・高の3つに分類して、陳列棚の下から上へ順に商品の価格帯が上がるように配置する
- 重点的に売りたい商品のフェイスを増やす、または陳列棚の中央に配置する
- 形やサイズが異なる商品を一箇所にディスプレイする際は、正面から三角形になるように配置する
なお、店舗の棚割りを最適化するポイントはこちらの記事をご確認ください。
②購買プロセスを意識して動線を設計する
ビジュアルマーチャンダイジングによる売り場作りを行う際は、顧客の購買プロセスを意識して店内の動線を設計することがポイントです。
店内の動線を設計する際は、AIDMAのフレームワークを活用できます。AIDMAとは、商品を認知してから購入するまでの行動を5段階に分類したモデルのことです。
▼AIDMAに基づくマーチャンダイジングの実施例
段階 |
手法 |
動線設計の例 |
Attention(注意) |
VP |
店舗の入り口すぐの場所におすすめ商品を展示する |
Interest(興味関心) |
VP+IP |
商品のテーマやカテゴリに合わせた陳列方法で、「店内をもっと見て回りたい」という期待感を醸成する |
Desire(欲求) |
IP+PP |
各陳列棚でPOPやパネル、グッズなどを用いた装飾を行い、「利用してみたい」と思わせる |
Memory(記憶) |
PP |
ディスプレイや装飾方法で視覚的な印象づけを行い、記憶に残るようにする |
Action(行動) |
VP+IP+PP |
商品の購入を後押しする |
③購買行動を分析して改善を図る
ビジュアルマーチャンダイジングを取り入れて売り場を作る際は、施策後の購買行動を分析して改善につなげることがポイントです。
実店舗での購買行動データを収集して、商品購入への影響度合いを分析・可視化することで、商品の陳列方法や動線、ディスプレイの見直しを図れます。
また、購買行動データを基に顧客の購買心理や趣味嗜好などを分析することで、戦略的な設計ができ、売上や顧客満足度の向上にも結びつくと期待できます。
まとめ
この記事では、ビジュアルマーチャンダイジングについて以下の内容を解説しました。
- ビジュアルマーチャンダイジングの種類
- 期待できる効果
- ビジュアルマーチャンダイジングの手法
- ビジュアルマーチャンダイジングに取り組むポイント
リアルな購買体験を提供できる店舗では、商品の陳列方法やディスプレイ、演出などにこだわって視覚的なアプローチを行うことが有効です。
ビジュアルマーチャンダイジングに取り組む際は、商品の特性や顧客の行動などを踏まえて陳列方法を変えたり、動線設計を行ったりすることがポイントです。また、施策によってどのような影響があったのか、購買行動データを収集・分析して改善につなげることも重要です。
しかし、データの収集・分析には経験や知識が求められます。より効率的に高精度の分析を行うには、専用のツールを活用することも一つの方法です。
コニカミノルタでは、ビジュアルマーチャンダイジングを取り入れた売り場づくりに役立つ『EX感性』というツールを提供しています。EX感性は、最先端の画像解析技術と感性脳工学に基づき、売り場の注目性や印象などを定量的に分析・評価できるツールです。顧客の視線を科学的に分析することで、商品の見せ方を最適化できます。
詳しいサービス内容は、こちらの資料をご確認ください。